任意団体において税務申告していないケース

既存の任意団体において税務申告していないケースがありますが、任意団体であっても、税務申告義務はあります。任意団体の税務は、非営利型の一般法人とほぼ同じです。

 

1.法人税

税法上定められた34事業に課税される収益事業課税であり、収益事業を行っている法人は申告義務があります。

 

2.消費税

過年度の課税売上・税務上の届出の有無によって、申告義務の要否が決まります。

 

任意団体と一般社団法人は、法的には別の存在であるため、一般的には任意団体の納税義務が一般社団法人に継承されることはありませんが、仮に任意団体に納税すべき税金があった場合、税務調査等によって第二次納税義務を指摘される可能性があります。そのため、任意団体で税務申告を行っていない場合は慎重に検討する必要があります。

任意団体の活動の全体を決算上取り込んでいないケース

任意団体は法人格をもっていないため、決算の集計単位が曖昧になっているケースがあります。 

たとえば、任意団体の活動として実施しているにもかかわらず、特定の活動(例えば、学術集会、講習会等)の収支を任意団体の活動収支に合算せず、別会計として管理しているケースがあります。

本来、団体として活動している全ての収入・支出は、当該団体に帰属すべきものであり、税務申告の際の課税の対象も、団体として活動している全ての収益事業の収入・支出を集計する必要があります。

一般法人化する際においては、別会計になっている活動収支も団体の活動収支に含めるように法人運営の方法を見直す必要があります。

決算書類の見直しについて

任意団体の計算書類が、損益ベースの計算書類(損益計算書)ではなく、収支ベースの計算書(収支計算書)であるケースがあります。 

収支計算書を作成すること自体は問題ありませんが、法律上の計算書類は貸借対照表と損益計算書(正味財産増減計算書)であるため、損益計算書(正味財産増減計算書)を作成する必要があります。

(損益ベースと収支ベースの主な相違点は、棚卸資産の調整、固定資産の取得・減価償却費の計上、引当金等です。)

なお、従来税務申告を行っていなかったケースで、一般法人化後に税務申告を行うようなケースにおいては、税務申告上の収益事業が集計できるように、事業の区分、費用の集計方法を検討しておく必要があります。

また、今後の公益法人化を目指している団体においては、公益認定の申請を踏まえて、平成20年の公益法人会計基準に準拠した形で計算書類を作成しておくのが望ましいといえます。

決算スケジュールの見直しについて

一般法人化後は、決算スケジュールについて法定のスケジュールを意識しておく必要があります。理事会設置法人の場合は、監事監査後に理事会で決算承認を行い、その後社員総会(評議員会)で決算承認を行う必要があります。 

社員総会(評議員会)の開催日の2週間前の日から決算書類を法人に備え置いておく必要があるため、社員総会(評議員会)と理事会を2週間以上のスケジュールを空けておく必要があります。決算承認に関する理事会と社員総会(評議員会)を同日に開催しているケースがよくありますが、一般法人化後は同日開催は認められません。

また、税務申告の期限は、原則として事業年度終了後2カ月以内です(法人税・地方税は申告延長手続をすれば、3ヵ月以内に延長可能です。消費税については延長手続はありません。なお、収益事業を行っていない法人の地方税申告は、決算期に関係なく4月末になります)

なお、決算書類は招集通知の際、社員・評議員に提供しなければなりません。仮に決算書類に関して、事前の招集通知に添付せず、総会・評議員会当日に配布していた場合、一般法人化後はそのような運用は認められなくなるので留意が必要です。

社団法人と類似の法人運営をしているにもかかわらず評議員制度を設置しているケース

会員制で運営している任意団体においては、社団法人と類似の運営方法となっているケースが多いため、一般法人化する際も、一般社団法人となるケースが多いです。 

他方、会員制を運営している団体でも、評議員・評議員会制度を設置しているケースがあります。

通常、評議員・評議員会は、財団法人における制度のことを意味します。そのため、法律上の評議員・評議員会は、財団法人における評議員・評議員会のことを意味します。他方、社団法人においても、任意の機関として評議員・評議員会を設置することは可能です。

会員制度と法律上の社員の関係性について

会員制度を設置している任意団体が一般社団法人化する場合、会員と法律上の社員をどのように位置付けすべきか検討しておく必要があります。

 

1.会員=法律上の社員

社団法人は社員から構成される法人であるため、会員=法律上の社員とするのが非常にシンプルで、社団本来の姿であるといえます。他方、会員数が非常に多い団体の場合、社員総会を開催するための事務コストが非常に大きくなるため、検討が必要になります(招集通知の発送・回収のコスト)

なお、会員の中に、正会員と賛助会員(準会員・学生会員)等を設け、正会員のみを法律上の社員とするケースはよく見受けられるケースであり、法律上、問題ありません。

 

2.代議員=法律上の社員

数千人・数万人規模の団体の場合、会員=法律上の社員として総会を運営した場合、総会の運営費だけで数百万円以上かかることになり、また委任状・書面決議の回収管理も非常に大変になります。そのため、会員の中から選挙により、会員の代表者として代議員を選出し、当該代議員を社員として位置付けするケースが考えられます。

 

3.会員と法律上の社員は全く別のもの

例外的ではありますが、会員と法律上の社員を全く別のものと位置付けるケースもあります。社員の定義と会員の定義は、必ずしもイコールにならなければいけないものではありません。

ただし、社団本来の姿から考えると、会員の意見を反映させた方が法人の運営として望ましいといえます。このような場合、法律上の社員総会とは別に、会員総会のようなものを運営し、会員への情報提供・意見徴収を別途行っているケースが見受けられます(ただし、法律上の機関でないため、意思決定等、法律上の権限を付与することはできません)